1976年に南アフリカで設立されたRape CrisisのHP http://rapecrisis.org.za/ にある
RTS(レイプトラウマ症候群)の文章を母とわたしとでざっくり和訳してみました。
※注意※
わたしも母も支援職や専門家ではありません。
あくまでわたしがまとめて残しておきたかったので、母に翻訳協力してもらいました。
専門用語の日本語訳は間違ってるかもしれませんー。
和訳では、原文で「Rape」と書かれている部分を、敢えて「性暴力被害」と書き換えています。
また「survivors(生存者)」はほぼすべて「サバイバー」と訳しています。
以下はわたし個人が他のサバイバーたちによる文献や対話のなかで知りえた知識です。RTSの話の大前提としてまとめました。
◆RTS(レイプトラウマ症候群)でいう『レイプ』は、日本の強姦罪にあたるものだけを指しているのではなく、あらゆる性的侵害・性暴力被害を指します。
◆RTSは ”「脅威的で異常な量のストレス」(abnormal amount of stress)をした人なら誰でも体験する「普通の反応」(Normal response)”です。
◆海外では犯人の特定・逮捕を免れるため等の加害者の都合によって、被害者が殺害されたり行方不明になるケースが多いそうです。
また、被害を受けたことを強調する「Victim(犠牲者)」に対して、被害を生き抜いた人々の強さに焦点を当てた「Suviver(生存者)」という言葉が使われるようになりました。
この「Suviver」という言葉は、被害当事者にとって自尊心の回復のステップの1つとなり得るとわたしは感じています。
被害後、何をするにせよ、1度は「あの時、殺されておけばこんなに苦しまずに済んだのに。」という気持ちでいっぱいになります。
そんな時、自分に対して「それでもわたしは生きてゆくのだ。」と自分で自分を励ますことができる言葉だと思います。
◆戦争体験や、災害による体験、事故などと大きく違う点は『自分自身の身体』が『脅威的で異常な事態の現場そのものであること』です。
アイデンティティの一部である自分の身体が、暴力の侵入により、急激にかつ強烈な自己喪失に近い『アイデンティティの危機』を体験することになります。
その影響は、身体だけでなく精神面・心(感情・感覚)にも及びます。
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私がRTS(レイプトラウマ症候群)を知ったきっかけは、ジュディス・L・ハーマン著『心的外傷と回復』を読み終えた後でした。
ハーマンによるPTSDの歴史や症状等についての解説よりも、はるかに端的に『性的侵害によって起きうる反応』がまとめられていると感じました。
ローラ・デイビス/エレン・バス著『生きる勇気と癒す力』の中に、ある性虐待サバイバーが元加害者に対して訴訟を起こした事が書かれています。
そういった性暴力関係の訴訟の場で、RTSはサバイバー側の有用な証拠とされていた時代もあったそうです。
ですがそういった訴訟に対し、「カウンセラーや精神科医によって偽りの記憶を植え付けられている」という世論等、激しいバックラッシュが続いた時代もまたあったそうです。
(詳しくは『生きる勇気と癒す力』を参考にして下さい。)
当時も今も、わたしはRTSの日本語文献を持っていません。出版等がされているのかどうかも不明です。調べてはみましたが私には見つけられませんでした。
同じサバイバーである人たちがアメリカのワンストップセンターを見学したり様々な研修に参加してくださいました。
また彼ら・彼女らがそれぞれにワークショップや講座をやってくださったおかげで、わたしはこのRTSの存在を知ることが出来ました。
その後もやはり「ここでRTSの話がサッと出来れば、当事者らがものすごくスムーズに自分の状態や気持ちを整理できるのに。」と感じる機会が多々ありました。
それで、日本語文献が無いのなら大意しか訳せなくてもまとめておきたいと思った次第です。
引用元は Rape Trauma Syndrome | Rape Crisis
http://rapecrisis.org.za/information-for-survivors/rape-trauma-syndrome/
以下は「序文のみの和訳」です。
レイプトラウマ症候群とは
過酷なトラウマにさらされた人は、だれもその苦しみから逃れられる事はできないし、その苦しんでいるというしるしは症状としてあらわれます。
これらの色々な症状が時間が経つにつれて一定のパターンで一つのグループとして現れる時、それらは[ 症候群 ]と呼ばれます。
一度、あるパターンが定着するか、もしくは、それが変化しそうになく、その人物の職務などに永久的に影響があると思われると言う事になれば、それは障害や精神疾患とみなされることになります。
レイプトラウマ症候群(RTS)とは、性暴力被害(性的侵害・性虐待・レイプ・DVなど)サバイバー達の反応(症状)に与えられた医学用語です。
性暴力を受けたことによるトラウマのある人にとって、RTSは『心理的に健康な人が起こす反応である』という事実はとても重要です。
これらの症状は、精神障害や病気から起こるのではないのです。
心理的な苦しみや損傷を見極めるもっとも強力な要素は、その衝撃的な出来事自体の種類によります。
レイプされた個人の性格や特性は、この圧倒的な出来事の前には、ほとんど関係がありません。
身体的な危害や怪我も、また、大した問題ではないのです。
個々に、少しの怪我、または何も怪我をしていなくても、このトラウマ的な状況を人前にさらすことで既に酷く傷ついているかもしれないのです。
そこで、レイプの実際の被害を見る前に、レイプによるトラウマの本質をまず検討することが重要なのです。
驚愕、死の脅威、外傷の脅威などの要素があるだけでなく、レイプと同じぐらいの酷い暴力をふるう人もまた存在します。
ここでの暴力とは、身体的、感情的、道徳的、また親密な性交渉を含む、もっとも近しい人物との関係を意味しています。
レイプする側の意図するものは、人の最もプライベートな面を汚し、その犠牲者を完全に無力化することです。
そこで、この出来事(レイプ)というのは、犯罪者(レイピスト)が、はっきりと恐怖心や支配、辱めなどを、被害者に与えようとしている事に結びついています。
そのため、性暴力被害者は、自分が理解できないような計画的な恨みを動機として加害者が行動を起こすのだとみている事が多いのです。
レイプは、その性質上、身体的な外傷を引き起こします。
そこで、それは、組織化された社会暴力、すなわち戦争時における兵士たちと比較する事が出来ます。
生きてはいるが、同じ軍隊のプライベートな戦闘員として。
もし私達が、単純にレイプを『したくなかったセックスであるだけだ』と思うのなら、レイプトラウマ症候群を私達は全く理解できなくなってしまいます。
退役軍人が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいるように、レイプのサバイバーも、身体的、行動的、また心理的なレベルで、似たような症状を経験するのです。
序文の後にある「一般的にサバイバーに見られる反応・症状」は ↓ です。
回復の段階については Phases of Recovery | Rape Crisis にある文章を和訳しています。
http://rapecrisis.org.za/information-for-survivors/phases-of-recovery/
RTSについての参考・参照ウェブサイト
このRTSについての英文をWebで公開してくださっている支援団体
【Rape Crisis】のFBページ。
RAINN (Rape, Abuse & Incest National Network)
アメリカの国立性暴力ホットラインより
アメリカ国防総省 軍隊内等での性暴力ヘルプライン 自殺予防ホットラインも一緒に紹介されています。
個人的にこういった関連性の高い相談先を一緒に掲載・告知するスタイルが当たり前になって欲しいです~。
あとすげえと思ったのはセルフケア情報アプリまである。何それすごい。
赤城高原ホスピタル ホームページより
犯罪被害者等施策|政策統括官(共生社会政策担当) - 内閣府
警察庁犯罪被害者支援室/警察による犯罪被害者支援ホームページ
また用語等の日本語化は、『生きる勇気と癒す力』があったからこそのものです。
たくさんのサバイバーたちと著者、翻訳者の方々、本当にありがとうございました。
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